旅行中など、よく知らない場所で、通りすがりの人に道順をたずねたというのは、だれしも経験のあることだろう。そんな場合、日本でなら、知らなければ「わかりません」という答えが返ってくるので、別の人に聞けばいい。だが、メキシコでは事情が違う。やっかいなことに、知らなくても教えてくれるのだ。たとえば、「××ホテルへはどう行けばいいんでしょう?」などとたずねたとき、「わかりません」という答えが返ってくることはまずない。だれにたずねようが、めざす方向に手を下からふり上げ、少し首をかしげるようにして、「アヤア(あちらです)」と教えてくれる。だが、教えられた方向にいってみると、目的地にはたどり着けず、別の人に聞いてみると、まったく違う方向を教えられたりする。どうしてそんなデタラメを教えるのか?メキシコ人は、せっかく自分にたずねているのに、「わかりません」と突き放すのは、不親切で失礼だという感覚をもっている。だから、知らないことをたずねられると、推測で答える。メキシコ人の「アヤア(あちらです)」は、「あちらじゃないかと思います」という意味のことが多いのだ。これは、道順を聞かれたときだけではない。「あれは何のためにつくられたのですか?」など、ありとあらゆる質問に対して、知らないことに対しても、推測で答える。とくに正確な答えを要するような場合は別にして、ふつうの日常会話でなら、質問したほうも、相手の答えが正確でなくても、いちいち気にしない。日本人の目から見ると、知ったかぶりのように見えるが、メキシコ人にとっては、それが親切な答え方。逆に、日本人のように、「さあ、ちょっとわかりません」などと正直に答えると、「不親切」だと感じる。これは、メキシコだけでなく、スペインでも、道をたずねたときに推測で答えられて、迷ったという話を聞く。メキシコ人のこの国民性、植民地時代にスペイン人から受け継いだものかもしれない。
旅先でお世話になる反面、泣かされるのが街角の公衆電話だ。AT&T(アメリカ電信電話会社)の調査によると、日本は、世界で最も公衆電話の設置台数が多いといわれるアメリカに次いて泄界第2位の公衆電話を持ち、街を歩けば公衆電話にぶつかる。こうした“電話大国”に育った私たちから見ると、世界の公衆電話にはビックリさせられることが実に多いのである。例えば、ヨーロッパの主要国の公衆電話について調べてみると、これが実に多種多様で、このまま本当にEU統合が可能なのかと他人事ながら心配になるほどだ。使い方で最も個性が強いのがイギリスである。まず、5台に1台ぐらいは故障しているのでコインを料金投入口に差し込み、受話器を取ってブーツという発信音を確かめてからダイヤルする。最も古い機種は相手が出ても2、5、10、50ペンスを差し込まないと通じない。しかもおつりも出ず、何ともつっけんどんな電話である。日本へのコレクトコールもやっかいで、155番を回してオペレーターに頼むが、自分の使っている公衆電話の番号を聞かれるので、あらかじめ調べておかないとあわてることになる。だが慣れてくるとイギリスの電話は実に便利だ。オペレーターに頼めば、目覚ましコールや時報、天気予報のほか、音楽、クイズ(解答は翌日)、ロンドン市内の観光、催事情報、競馬、寝つかれない時に聞かせる子供向け童話などの様々な生活情報サービスを提供してくれるからだ。これはとっつきにくいが、つき合うと実に親切というイギリス人気質と同じである。つまり各国の公衆電話には、それぞれの国民性が反映しているのだ。イギリスの場合、最近ではプッシュフォン式で投入金額と残高が刻々と表示される“ブルー・ベイ・フォン”や日本のテレフォンカードのような“カードフォン”も普及し、2、5、10、20ポンドの4種類がある。テレフォンカードは、両替所の「Bureaudechange」や郵便局などの緑色のポスターのあるところで買える。ロンドンなどの大都市では、第二電電にあたるマーキュリー社製の公衆電話も増えている。
世界遺産になった原爆ドームはチェコの建築家ヤン・レッルが設計した産業奨励館たった。この廃墟も一時は撤去しようという声があったのだが、平和への願いの象徴として残す決断をした。昭和二十三年のことだが、反対もある中で勇気ある決定だった。神戸の地震でも壊れた建物をすぐに撤去してしまったが、平和や防災のための教材としては記念館などより実物を残すことがはるかに説得力がある。各地でよく考えて欲しい問題だ。広島には現在でもたくさんの市電が走っている。世界的にも路面電車の再評価が進んでいる中でエールを送りたい。広島はカキの養殖も盛んで市内の太田川に浮かぶカキ船は広島の冬の風物詩である。近年ではフランスの生ガキも広島から稚貝を入れており、伝統的な丸い形のブロン種よりむしろ美味という評価がされている。近年ではキャベツがたくさん入った広島風お好み焼きもヘルシーさを評価されて広島を代表する味覚になっている。